バラクキバチ (Syrista similis)

 
 
 
 バラクキバチと思われる被害が今年(平成18年)は多いです。特に地植のツルバラのシュートに集中しているように思います。
 その生態については詳しいサイトにゆずりますが、茎に複数の穴をあけ、産卵管を差し込んで全周に横傷をつけることで、茎の内部の導管を切断してシュートをしおらせ、一番上の穴に産卵しておいた卵から数日程度で幼虫が孵り、弱った茎の内部を下向きに食べ進むと言われています。ところが、私の毎日の観察では、しおれた当日に既に幼虫は孵っていました。いつの間にかトンネルを掘り、短くても1センチ、長いものは15センチも奥に進んでいるのです。
 どうやら、小樽市の私の庭に来ているハチは、バラの茎を傷つけて産卵したときではなく、幼虫が孵化したときに枝がしおれるように計算しているようです。そうすると対抗策も、被害枝を見つけた時に、卵のある枝先をつまみとる、あるいは5枚葉を1つつけて切り取るという方法ではなく、茎を下に掘り進んでいる虫を含めるように長く切り落とす必要があるのです。
 では、どのように食べ進むかがわかれば、切り取る長さも最小限で済み、枝を温存できるのではないでしょうか。ここに書くのはそういうテーマの研究報告です。 
2006.6.22   N.Nishi
 
http://www2s.biglobe.ne.jp/~mham/byokimsi.htmshapeimage_2_link_0

バラクキバチweb

まとめ


 幼虫は放っておくとこのまま食べ進み、かなり奥に到達してそこで蛹を作り越冬するそうです。主幹部まで食べられてはバラの命に関わります。しおれ始めてから1日以内に15センチ進んでいることを考えると、2〜3日のうちに主幹部に到達するかも知れません。


 幼虫の位置を知るには、螺旋を見つけることだと最初は考えましたが、螺旋より下に食い進んでいるケースが複数ありましたので、螺旋より下に枝を少しずつ刻んでいって、断面に虫食い跡がないところまで切る、という方法をお勧めします。下に行くにつれ虫食い穴は太く見やすくなりますから、必ず発見できます。


 被害を受ける時期ですが、5月頃の一時期に限るわけではなく、その地域、そのバラによって美味しそうな柔らかいシュートが出る時期は注意した方が良さそうです。防御のため花芽や茎にアルミホイルを巻くと良いというアドバイスもありますが、実際にはシュートは柔らかいので重い物をつけたくないし、花芽に当たる日光も遮りたくないしで難しいです。ただ、シュートの先端からせいぜい10〜20センチの間に産卵しているので、先端からその辺りまでアルミホイルかビニール袋で軽く覆うくらいの事は出来るかも知れません。そうやって隠すともっと下側に産卵するでしょうか?

 

 シュートが襲われやすいと書きましたが、一部の旺盛に咲くバラでは枝先から伸びて花をつける新梢にも被害がありました。これはニュードーンだけでした。 新梢が太く柔らかいためだと思います。


 切り取った後ですが、虫は枝を離れても少なくとも数日は移動しながら生きています。と、いうのは私の実験用ビニール袋の中で今も生き残っているからです。多くは切った枝にとどまりますが、外に出てくる者もいますので、できればバラの近くには捨てない方がよいでしょう。星にするのも良いでしょう。


 注意深く見ると、最上段右のピエールの写真に描かれている斜線には右上がりと左上がりの2通りがあります。別な切開の写真でも右回り螺旋と左回り螺旋の両方の食害を受けた枝がありました。同じ個体が右回りと左回りの両方をする現象は不思議です。 想像ですが、 旋回する行動自体は遺伝的にプログラムされていないのではないかと思われます。それゆえ、途中で後戻りしたり、中心に入ってみたり、樹皮下に出てきたりという複雑な食害痕があるのでしょう。

 最後に、成書などでは、バラクキバチは産卵の穴だけでなく、その下部に複数の傷をつけるという事ですが、私の目では見える穴はひとつもありませんでした。樹皮を剥いてみても傷が見つかりません。総合すると、小樽で見るバラクキバチと成書にあるものは種類あるいは習性が違う可能性があります。ところが、日本のクキバチ属はバラクキバチ1種だけなのです。 

 ひょっとして新種オタルバラクキバチでしょうか。それとも地域によって習性も変化するのでしょうか。